異業種参入を支えるMVNEの役割
最近は格安SIMの会社が乱立しており、どのサービスを選んでよいかわからなくなるくらいです。格安SIMを提供する会社をMVNOと言いますが、MVNOはブランドだけ(名前だけ)サービス名として独立していて中身の技術的な部分は他の会社に委託していたりすることが多いのをご存知でしょうか。インターネットのプロバイダと同じ仕組みですね。
MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)は、「MVNOとの契約に基づき当該MVNOの事業の構築を支援する事業を営む者」と定義されています。つまり、もともと電気通信事業などを専門に扱っていない異業種から格安SIMへ参入したい業種の会社へ、ノウハウや技術的支援を行い、MVNOへの参入を支援し手助けする事業者のことを指しています。

具体的には例えば「格安SIMのインターネット通信速度はキャリアとMVNOの接続回線次第」の記事中でレイヤー2接続について触れていますが、より深い階層でのサービスを展開するレイヤー2はPGWなどの装置の制御をしなければならず、新規参入の障壁となります。
これをMVNEとなる事業者が間に入ってコンサルティング・仲介してくれれば、新規参入もハードルが下がることになるわけです。MNO(キャリア=ドコモ・au・ソフトバンク)と新規参入したいMVNOの間で橋渡しをする役割がMVNEです。格安SIMの業態では通常、MVNEは自社でもMVNOとしてサービスを展開しており、それをさらに別の新規参入をしたいMVNOへ技術支援・提供をしていることがほとんどです。
MVNEを知れば格安SIMの選択に役に立つ?!
自分が検討をしている格安SIMが独自にレイヤー2接続をしてサービス展開しているのか、どこかのMVNEの支援を受けて運営しているのか(つまりどこのMVNE系列なのか)を知ることによって、会社間の全容が見えてきます。
例えば具体的に役に立つのは、仮に速度が遅い格安SIMを契約してしまい解約して別の格安SIMに再度乗り替えを検討している場合、もし乗り換え先の格安SIMが同じMVNE系列である場合、ほとんどの場合は改善されません。
速度に不満があったり、ページのプロバイダ閲覧規制(プロバイダによって2chなど見れるページが規制されて見れないこともある)に不満があり乗り替えする場合に、もとの契約と同じMVNE系列のMVNOと契約してしまっては意味がありません。MVNE系列が同じだと、通信帯域は同じものを利用していたり(別途専用線の契約をしていることもあります)、通信規制なども同じことが多いからです。
検討しているMVNOがどこのMVNEかを把握していると、役に立つかもしれません。
実際にどこのMVNEに属するのか
ほとんどのMVNOはドコモのインフラを利用しています。ドコモなどからはMVNEやMVNOの詳細は公表されておらず、APN等の設定、traceroute、IPアドレスからなどで推測をするか、MVNO各社で公表されている情報やその技術担当者がインタビューに答えている記事などから推測してみるしかありません。
代表的なMVNE(予測)
OCN系(NTTコミュニケーションズ)
- OCN モバイル ONE、ぷららモバイルLTE、NifMo など
IIJ系(インターネットイニシアティブ)
- IIJmio、DMM mobile、hi-ho LTE typeD、wonderlink LTE など
InfoSphere(NTTPCコミュニケーションズ)
- インターリンクLTE SIM など
- InfoSphere モバイルライトプラン for 「フレッツ」、SANNET LTE、Tikiモバイル LTEライトなどは新規受付を終了しており、気になるところ。
独自レイヤー2接続と思われる代表的なMVNO(予測)
- 楽天モバイル
- FREETEL (プラスワン・マーケティング)
- BIGLOBE (ビッグローブ)
- So-net (ソネットエンタテインメント)
- WIRERESS GATE (ワイヤレスゲート)
- mineo
私の個人的な感覚では、OCNモバイルやIIJなどMVNEとして展開しているところは直近ではぶら下がっているMVNOも含めて人気が急上昇しているため、設備増強が追いついていなく、以前よりは安定してきているものの依然として速度が遅い状態が蔓延しているように思えます。InfoSphere系列のMVNOはサービスの新規受付を終了しているところが多いのが気になるところです。
それに対して独自にレイヤー2接続して運用していると思われるところは安定した速度を出しているところが多い印象もあります。楽天モバイルは人気があっても3日間の速度制限を厳しく管理しているためか、速度は安定しています。
乗り換えの際に検討している格安SIMの運用もとを予測してみる
乗り換えの際にどのMVNE系列か、独自にレイヤー2接続しているところかを見ることもひとつの検討材料となります。付加サービス目的で格安SIMを乗り換えする場合は別ですが、速度などに不満があって格安SIMから別の格安SIMへ乗り換えする場合は、別のMVNE・独自にレイヤー2接続(L2接続)しているMVNOへの乗り替えをおすすめします。