【詳しく知りたい人向け】格安SIMのパケット通信(インターネット通信)の仕組み
格安SIMは、MVNOがキャリアから通信インフラを借りてサービスをしています。MVNO(Mobile Virtual Network Operator)は仮想移動体通信事業者のことで、ここでは格安SIMを運営する事業者(会社)のことを指しています。
格安SIMを利用する場合、音声通話の回線を利用する場合は、基本的にキャリア側の設備をそのまま利用しているため差がほぼ出ません。それに対し、パケット通信(インターネット通信)はキャリアの設備を介して、MVNOの設備を通してインターネットへつながるため、MVNO毎に差が大きく出てきます。
ちなみにドコモ・au・ソフトバンクのキャリアを、MNO(Mobile Network Operator)=移動体通信事業者といいます。
MVNOのインターネット通信の仕組み
格安SIMのパケット通信(インターネット回線)の仕組みは、以下のようになっています。
- キャリアの基地局の電波をスマホがキャッチして接続
- キャリアの基地局からキャリア内のネットワークへ
- キャリア内のネットワークを介して、MVNOのネットワーク装置(ゲートウェイ)へつながる
- MNVOの設備からインターネットへ接続

MVNOのゲートウェイに繋がる前の、①と②はキャリアの設備であり、キャリアの設備をMVNOが借りていることになります。これらの設備を借りているということを含めて、③のMVNOへの接続において、MVNOはキャリアに契約する回線の大きさによって接続料金を払います。
電波が届きやすいかどうかは基地局によって左右されますが、基地局の設備はキャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)が管理しています。よって基地局の部分はキャリア次第で、MVNOには関係がありません。
MVNOが関係する部分は、キャリアとMVNOの設備が専用線でつながっている接続部分、つまり③の接続回線区間です。キャリアとMVNO間の契約によって接続できる回線の太さが違ってきます。
例えばあるMVNOがキャリアと、事業者間の契約として200Mbpsで月額●万円という契約を交わし、MVNOのユーザーが増えて帯域を増強しなければならなくなったら、追加で400Mbpsで月額●万円という契約に増やすといったイメージです。この増強工事は数週間程度でできることが多いようです。MVNOとキャリアの専用線が最大で1Gbpsでつなげられるとしても契約内容によりキャリア側が通信速度を契約の上限に抑えるようコントロールしています。
さらにこの専用線が最大1Gbpsまで通信できるとして、MVNOのユーザーがさらに増え、専用線の上限1Gbpsよりも大きい容量に増設したい場合、MVNOとキャリア間の専用線自体を増やす工事が必要になります。この場合はかなりの期間を要するようで、数ヶ月から1年くらいの期間が必要なようです。
速度が常に安定しているMVNOはユーザー数の増加予測から必要になる接続帯域を数ヶ月・1年先を見越して増設計画し、回線のマネジメントをしています。どうやらこの予測はかなり難しいようです。
この予測が外れたMVNOで契約をしてしまうと、すぐには回線を太くすることができず、ユーザー数が増えているのに回線増強が追いつかず、ユーザーが増えるほど速度がどんどん遅くなるといった状態になってしまいます。
ユーザー数が急増している格安SIMや設備増強してなさそうな格安SIMは注意
見極めが難しいですが、先ほどの③の接続回線をケチっていたり、増設を失敗しているMVNOのユーザーは回線速度が遅いということになります。ある調査会社が発表している格安SIMの直近のシェアは、1位がOCNモバイル、2位が楽天モバイル、3位がIIJmioだったようです。
回線速度の調査をしている会社の直近の結果を見る限り、昼の混雑時間も速度が出るのは、楽天モバイル・FREETELあたりが強くそれ以外は1Mbpsを下回る格安SIMも少なくありません。(実際に私が利用している限りでも昼間の速度やそれ以外も問題ありません。)ただしそれ以外の時間帯などを含めてみると、格安SIM各社とも速度が安定してきているようには見えます。
多くのMVNOはドコモのインフラを利用している
整理すると、MNO=キャリア、MVNO=格安SIMを提供する会社 のことを指しています。
MVNOは、どこのキャリアから通信インフラを借りているかというと、コンシューマ向け(法人以外の一般ユーザ向け)では、ほとんどがドコモから通信インフラを借りて格安SIMのサービスを提供しています。au系の格安SIMは、mineo(A)とUQ-mobileの2社のみになり、それ以外、つまりほとんどの格安SIMはドコモの通信インフラを利用しているMVNOと考えてよいでしょう。
ソフトバンク系のMVNOはなく、Y!モバイルはもともと独立したMNOでしたがソフトバンクに吸収されたため、現在はソフトバンク系の通信事業者でMNOとMVNOの中間と言える存在と言えます。
キャリアとのレイヤー2接続とレイヤ−3接続の違いによるMVNOサービスの違い
格安SIMを利用しているユーザーは、自分のスマホがキャリアの基地局の電波をキャッチしてキャリアの回線へつながり、パケット通信(データ通信)の場合、基地局からキャリア内のネットワークを経由して、MVNOのネットワーク装置(ゲートウェイ)へつながり、MVNO設備を介してインターネットへつながると説明しました。
このキャリアとMVNOをつなぐ接続回線部分では、レイヤー2(データリンク層)接続とレイヤー3(ネットワーク層)接続の2種類あります。レイヤー2接続である場合は、PGW(Packet Data Network Gateway)の装置がMVNO側にあり、PGWをMVNO側で制御することができるため、よりきめ細かいサービスを提供できるようになっています。
IIJmioなどが拘束クーポンスイッチとして、通信速度の制御をリアルタイムに行うサービスはこのレイヤー2接続により実現されているようです。